「志がすべて」から会社をつくる。燈・野呂侑希氏が考える強い経営

燈株式会社 代表取締役CEO
野呂 侑希氏
AIをはじめとする先端技術を活用し、建設業など日本の基幹産業のDXに取り組む燈株式会社。
その代表を務める野呂侑希氏は、東京大学在学中から事業を立ち上げ、その後AIについて学びを深め、2021年に燈を創業しました。
野呂氏の経営で特徴的なのは、目の前の事業だけではなく、「どのような会社をつくりたいのか」という大きな目的から逆算して意思決定していることです。
「日本を照らす燈となる」という使命を掲げ、事業だけでなく、組織づくりや採用、経営者自身のあり方まで、その目的につなげて考えています。燈の公式サイトでも、「志がすべて」を中心とする「燈道」が会社の価値観として掲げられています。
本記事では、公式サイトや公開されているインタビューなど各種公開情報をもとに、野呂氏が何を基準に事業を選び、どのような考えで会社と組織をつくっているのか、その経営観を紹介します。

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この記事でわかること
- 野呂侑希氏が事業を選ぶときに大切にしていること
- 「日本を照らす燈となる」という使命に込められた考え
- 事業だけでなく「強い組織」を重視する理由
- 会社の成長に合わせて変化させているリーダーシップ
01 PHILOSOPHY
「何をやるか」の前に、事業を選ぶ基準を決める
野呂氏は、燈を創業する以前にも東京大学在学中に会社を立ち上げた経験があります。
最初の事業は順調だったものの、野呂氏自身は長く続けていくイメージを持てず、会社を離れることを選びました。
その経験から、次に会社をつくるときには二つの条件を決めたといいます。
一つは、「人の役に立っている実感を持てること」。
もう一つは、「知的好奇心が満たされる仕事であること」でした。
そこでたどり着いたのが、AIなどの先端技術を使い、既存産業が抱えている課題を解決するという方向性です。
「市場が大きそうだから」「流行しているから」という理由だけではなく、自分たちが長く向き合う意味のある事業なのか。
野呂氏の経営には、まずその判断軸を明確にしてから事業を選ぶという考え方が見えてきます。
02 MISSION
会社を大きくする理由を、使命から考える
燈が掲げている使命は、
「日本を照らす燈となる」
という言葉です。
野呂氏は、日本代表のスポーツチームが活躍することで多くの人が勇気をもらうように、経済の世界にも日本全体から応援されるような企業があってほしいと考え、「燈」という社名にその思いを込めたと語っています。
だからこそ、会社を大きくすること自体が最終的な目的なのではありません。
目指している未来を実現するために、会社を強く、大きくしていく。
この順番が、野呂氏の経営を理解するうえで重要なポイントです。
事業領域の選び方にも、その考え方が表れています。
燈がまず建設業界に力を入れた理由について、野呂氏は、建設は製造業の工場、医療の病院、物流の倉庫など多くの産業と接点があるため、そこから他の産業へ展開していけると考えたと説明しています。
現在の燈は建設業に限らず、AIを中心とする技術を使ったDX Solution事業とAI SaaS事業を展開しています。
目の前の事業だけを見るのではなく、使命から逆算して「どこから始めるべきか」を決める。
そこに野呂氏らしい経営判断が表れています。
03 ORGANIZATION
強い会社には、「強い組織」が必要になる
野呂氏が重視しているのは、プロダクトや技術だけではありません。
公開インタビューでは、大きな会社をつくるためには、プロダクトと組織の両方が強くなければならないという考えを語っています。
その考えを組織に落とし込んだものが、燈独自の価値観である「燈道」です。
その中心に置かれているのが、
「志がすべて」
という言葉。
さらに現在の公式サイトには、
「質実剛健」
「凡事徹底」
「爆速」
「圧倒的当事者意識」
「一致団結」
という5つの行動指針が掲げられています。
特徴的なのは、こうした言葉を掲げるだけで終わらせていないことです。
公開インタビューでは、日々の業務の中で行動指針を振り返る機会を設けるなど、価値観を実際の行動につなげる取り組みについても語られています。
組織文化も自然に生まれるものとして任せるのではなく、強い会社をつくるために必要なものとして意識的につくっていく。
野呂氏にとって組織づくりは、事業戦略と切り離されたものではないようです。
KEY POINT
できることから未来を決めるのではなく、
実現したい未来から、いま何をするかを考える。
野呂氏の経営の根底にあるのは、「日本を照らす燈となる」という大きな目的です。目の前の方法にとらわれず、実現したい未来から逆算して事業や組織を考える姿勢が、一貫した経営判断につながっています。
04 LEADERSHIP
組織が変われば、経営者自身も変わる
会社が成長していけば、同じリーダーシップがいつまでも通用するとは限りません。
野呂氏自身も、創業当初と会社が大きくなった現在とでは、コミュニケーションの取り方を変えてきたと語っています。
数人の組織だったころには、より直接的に意見を伝えていたものの、100人、200人と組織が拡大するにつれて、リーダーシップの表現方法も変化させてきました。
一方で、変えない部分もあります。
それは、経営者の役割を「全員から好かれること」だとは考えないことです。
会社を前に進めるために必要であれば、厳しい判断もする。
波風が立たないことを優先するのではなく、会社の成長にとって何が最適なのかを考えて意思決定する。
組織に合わせて自分自身を変化させながらも、経営者として果たすべき役割は曖昧にしない。
野呂氏のリーダーシップには、その二つが共存しています。
05 FUTURE
IPOもAIも、「目的」ではなく未来をつくるための手段
野呂氏の考え方は、会社の将来についても一貫しています。
たとえばIPOについても、それ自体をゴールとは捉えていません。
公開インタビューでは、IPOを会社を伸ばし、やりたいことを実現するための一つの手段として考えていることを明らかにしています。
同じことは、AIという技術にも当てはまりそうです。
燈はAIを強みとする会社ですが、現在の公式サイトでも、企業の課題を起点としてDXを進めることが事業の中心に置かれています。
さらに野呂氏は、AIの次に広がる技術としてロボティクスにも注目し、建設現場や宇宙といった領域まで視野に入れています。
重要なのは、AIを使うことそのものではなく、その技術を使ってどのような社会をつくるのか。
IPOも、AIも、ロボットも目的ではない。
大きな未来を実現するために、その時々で必要な手段を選ぶ。
野呂氏の経営には、そんな考え方が通っています。
PROFILE
野呂 侑希
YUKI NORO
燈株式会社
代表取締役CEO
東京大学在学中に人材領域の会社を立ち上げた後、同社を退任。松尾研究所でAIについて学び、2021年に燈株式会社を創業した。
燈では「日本を照らす燈となる」を使命に掲げ、AIなどの先端技術を活用して日本の基幹産業が抱える課題の解決に取り組む。現在、同社はDX Solution事業とAI SaaS事業を展開している。
まとめ
野呂侑希氏の経営を見ていくと、特徴的なのは「大きな目的から逆算して考えること」です。
事業を選ぶときには、人の役に立っている実感を持てることや、自身の知的好奇心を満たせることを基準にする。
会社をつくってからは、「日本を照らす燈となる」という使命を掲げ、その実現に必要な事業、組織、文化を考えてきました。
そして会社が成長すれば、経営者自身のリーダーシップも変えていく。
一方で、会社を前に進めるために必要な判断をするという経営者としての役割は変えない。
AIやIPOさえもゴールとして考えず、実現したい未来へ向かうための手段として捉える姿勢からは、野呂氏が「いま何ができるか」だけではなく、「どこへ行きたいのか」から経営を考えていることが見えてきます。
これから燈がどこまで事業領域を広げ、どのような会社へ成長していくのか。その歩みにも注目です。